まだあなたの夢を見る

再び出会う

あれはいつだったろう。ひとつの季節かふたつの季節か。私はまだ小さな息子を連れていた。初めて会ったとき彼は、テントの外で宣伝用の看板にバンセンを通していた。一緒にしようと誘ってくれた。役立たずなんだと、大きな舞台の準備を尻目に外で、私の息子…

最高のパートナー

今失いつつある。

コトバ

何でも口に出して、思いを伝え合うこと。間違っていたら謝る訂正する。それが〈正しい〉コミュニケーション、潔さだと思っていた。のに、何もコトバにして表さないあの人が結局印象が良いままだというのはどうしたことだろう。 偽物の優しさだと思いながら、…

それは唐突に

天使とやらの存在は何だか信じる気持ちにならないのであるが、突然予想もしないような幸福が舞い降りることがある。幸福になれていない貧乏性な私は、それ以上の意味をそこに見出さないよう注意しなければならない。 それでも、やはり私だけが、特別選ばれて…

繁栄と没落

山あいの小さな町に行商の男が辿り着いた。身なりは粗末で、町外れの小さな小屋に住みついた。どこから来たのか誰も素性も知らない男はやがて、あちこちの田圃を買い占めるようになる。金貸しを始めてみるみるその財産を増やす。 大きな屋敷を建て、使用人を…

読書レビュー~恋と言葉遣い~

キーワードから辿って来られると、失望させるので書名からの検索にかからないようにします。 読書感想文は昔から苦手で苦手で、夏休みの宿題の最後に残るものだったので、本筋?とか主題とかとはズレてると思います。 余り知らなかったけれど、結構話題の作…

夜明けに

一日中飲んでベロンベロンに酔っている彼と、彼の友達と何人かで軽のバンで送ってもらう。 その日ゆっくり彼と話すのは初めてだった。 耳元で囁く。 彼は優しく私の手を握り、身体を寄せて足を私の太股に絡ませてくる。 耳元で囁く。 彼は私の足をさすり、指…

逃避行憧れという名の生活疲れ

何もかも捨ててどこか遠くに行く。誰も私を知らない場所で生きていく。彼と二人だけで肩寄せ合って静かに優しい時間を生きていく。 あーなんて素敵! 私は殆ど米粒を食べないし家でご飯を食べない。朝ごはんは全く食べないし夜ごはんもほとんど食べない。仕…

破壊と再生

この世界を変えられると信じていた。 戸籍も天皇も要らない、男女や貧富や障害の有無も関係なく、子どもたちも大人も、みんな幸せな世界をつくりだせると信じていた。出稼ぎの外国人労働者もこの日本に住む全ての国籍の人々も同じように豊かさを享受できるク…

嫁姑

姑は可愛くて若くてお洒落で、無口な優しい人だった。ネットワークビジネスで化粧品を買っていて、売ると儲かる?位の位置にいたけれど、それとて宣伝したり頼んで広がったわけではなく、友だちが綺麗になった姑の肌を羨ましがって好んで買ってくれたからだ…

半さん

この夏?考えたことの一つに、どうしたら優しく穏やかな人間になれるかということでした。私自身の体調のせいもあり、今すぐこのまま皆とお別れが来たら?という想像を何度となくしたせいもあり。もちろん傷つけて取り返しのつかない関係も作ってしまってい…

無痛

久坂部羊著『無痛』を読んだ。作者は大阪大学医学部卒業の現役の医師でもある。「無痛」の男が出てくる。「無痛」とはどういうことなのか。 痛いのは誰だって嫌である。私は痛みには強い方だと思うが、それでもすぐに鎮痛剤を服用してしまう。 この世から「…

夏の思い出

カナカナカナカナカナ。 蟬の声の中、夕暮れのあぜ道を一輪車に乗せてもらって田んぼに向かう。 一輪の手押し車を押すのは父だ。いわゆる三ちゃん農家(死語?)のじいちゃんは亡くなっていたが、父はサラリーマン、母と祖母が農業をしていた。 田植えや稲刈…

夏の始まり

夏の始まりはベッドにいた。悪いことばかりを考えて、一人世紀末の感慨と感傷で満載だった。 人生ここで終わりか。と思った時走馬燈のように今までの人生が。 駆け巡らないんですけどっ。どういうこと? ドラマでは主人公が人生の起承転結ー幼い頃の幸福な風…

幼子のように。

父が私の携帯に何度も何度も着信を残している。留守番電話は無言。何があったのか心配でたまらず私も何度も家に電話をする。すれ違う。やっと通じたと思えば、今かなたの家に来ているのだが鍵がないのだと言う。今から帰るのだが鍵がかけられないと言う。お…

Parfait Amour

完全な愛。完璧な愛。 そんなものはこの世界に存在するわけはない。それがわかっているからこそ、人は求めるのかもしれない。 私も何処かに存在する完璧な愛を求めて、さまよい続けてきたのかもしれない。完璧な愛と言うと基督的な愛を連想するが、amourとい…

小説家になったのかな、彼女

地方の文学賞の審査員、高橋のぶ子なんですよね。昔の友達で高橋のぶ子が好きで小説家目指してるっていう人がいたなあ。高橋のぶ子、当時は私は三島とか漱石だったので魅力がわからなかったけど今は好きな作家の一人です。たまに幻惑的な場面があってその際…

バンパイア

バンパイアと言えば漫画好きな私にとっては『ポーの一族』であるのである。 美少年エドガーがバンパイアとなって永遠の時を生きる。美しいけれど禍々しい存在、「狩られる」存在としてのバンパイア。 運命に翻弄され、それに従うしかない「人間」の悲しみ(…

悲しくて暗くて不思議だけれど少し温かな

仕事が立て込んでいるので、しばし休憩しながら。(勤務時間は終わっています) この間からこのblogに書きとめておこうと思っていたハナシがありまして。最近悲しいことに親類の自死に遭遇しました。その件はまた書ければ書こうと思います。 そのことをきっ…

ひとめぼれ

とても若いころは、異性の外見に惑わされていたものだった。なんせ、中学生では、DavidSylvianだの王道のDavidBowieだのが、音楽性関係なく外見で好きだったのだから軽薄なのだ。 そんな私も大学院生の時、知り合いの影響で市民運動やフェミニストムーブメン…

蛇にピアス考

小説家志望としてはライバルは若手の華々しい小説家。本当は吉本ばななが同年代のような気もするが、ここは見栄をはって金原ひとみということで。2008年だかの蜷川幸雄監督の映画を観ましたビデオで。小説は話題になった頃読んだので原作は感覚的な印象しか…

命の終わりは

命の終わりは誰も知ることができない。母の生活の介助をしながら、母が亡くなったら母の中にあるコトバや思想や信仰や体験はどこに行くこともなくただ灰になってしまうのだろうと思った。それは私も同じ。思想なんていうほどのものは私にはないけれど、コト…

小説家になることにした。

面白かったこと多少盛りながらupしていく予定です。