夏の思い出

カナカナカナカナカナ。

蟬の声の中、夕暮れのあぜ道を一輪車に乗せてもらって田んぼに向かう。

一輪の手押し車を押すのは父だ。いわゆる三ちゃん農家(死語?)のじいちゃんは亡くなっていたが、父はサラリーマン、母と祖母が農業をしていた。

田植えや稲刈りは人を頼んで農作業をするが、父も仕事から帰って田んぼの水具合や草を見に行くことはあった。そんなとき、妹と二人付いて行くのだった。

 

その風景に会話はない。父は幼い娘二人に何を話しかけていたのだろう。

もしかしたら私と妹だけでくすくす笑い合っていただけなのかもしれない。

 

幸福な夏の夕暮れ。