嫁姑
姑は可愛くて若くてお洒落で、無口な優しい人だった。ネットワークビジネスで化粧品を買っていて、売ると儲かる?位の位置にいたけれど、それとて宣伝したり頼んで広がったわけではなく、友だちが綺麗になった姑の肌を羨ましがって好んで買ってくれたからだという。差し出がましくなくて誠実そうなのだ。
私の母は田舎者でお洒落でもないし化粧ひとつしない素朴な人間だった。
義理の父が亡くなった時、私はその闘病生活やら義理父の人柄やら思ってワンワン泣いた。短い付き合いだったけれど真面目な優しい人で、娘が出来たと喜んでくれていたらしく、私たち夫婦が行くと必ず美味しいものを食べに連れて行ってご馳走してくれた。
病院では家に帰りたい帰りたいと駄々をこねていて、こんなに早く亡くなるなら親孝行したかったと思った。
お葬式でお姑さんに綺麗に着付けてもらった喪服を着て私は最後のお別れでワンワン泣いていた。
母が私に言った。
あのとき、
かなたの涙が棺桶にポタリと落ちた。
それをお義母さんはハンカチで拭き取った。
母の観察力の鋭さは我が家では定評があり、ズバリ言うB型女なのだが、私は母から聞かされた、姑の仕草にぞっとした。
娘の落とした涙を汚いもののようにハンカチで拭き取る、悲しみのさなかに。人情家の母には、違和感を覚える行為だっただろう。
暫くして婚家との縁が薄くなってから初めて私に語ったワンシーンだった。